■海外情報
★スウェーデンにおける自動車用先進燃料の動向
《AMF-TCP(自動車用先進燃料技術連携プログラム)2021年間報告書より》

出典:
https://www.iea-amf.org/
◆◆スウェーデン◆◆
自動車用先進燃料普及の背景及び政策
スウェーデンの環境政策の全体目標は、国境を越えて環境と健康の問題を増加させることなく、主たる環境問題が解決された社会を次世代に引き継ぐことができるようにすることである。スウェーデンは、世界初の化石燃料を使わない福祉国家の一つになることを目指している。これを達成するためには、運輸部門の化石燃料依存を打ち破る必要がある。運輸部門の総エネルギー需要を削減し、残りのエネルギーを再生可能で持続可能なものにするなど、いくつかの対策が必要となっている。
2017年に、新しい気候政策の枠組みが承認された。長期的な気候政策目標は、遅くとも2045年までにはスウェーデンの温室効果ガス(GHG)の正味(ネット)排出量をゼロにすることである。より正確に言えば、長期的な気候政策目標は、スウェーデン国土における活動からの排出量が1990年の排出量と比較して少なくとも85%削減されることを意味している。ネットゼロ排出量を達成するために、柔軟性のある対策が含まれている。運輸部門では、2010年と比較して2030年までに少なくとも70%の排出量(国内航空旅行を含まない)の削減も適用されている。
2018年半ばに導入されたもう一つの重要な対策は「削減の義務」であり、これにより燃料供給者がバイオ燃料を導入しガソリン及び軽油の販売量からのGHG排出量を削減する義務を負うことになった。2022年の削減義務は、ガソリンで7.8%、ディーゼルで30.5%である。2030年には、ガソリンが28%、ディーゼルが66%となる。削減義務制度に含まれるバイオ燃料には、化石燃料と同様にエネルギー及びCO2課税が適用される。削減義務制度外のバイオ燃料には軽減税率が適用される。航空用燃料も2021年7月1日から削減義務の対象となる。2022年の削減義務は1.7%である。
自動車用先進燃料の動向(統計情報)
1990年以降、乗用車の台数は約350万台から490万台へと増加したが、乗用車からのGHG排出量は、1990年から2007年まで約1,300万トンと、どちらかというと安定的に推移してきた。しかし、2007年以降、排出量は大幅に削減され、2020年には約950万トンとなった。削減の主な理由は、新車のエネルギー効率の向上と自動車用再生可能燃料の使用である。
同時期のガソリン車やディーゼル車以外の車両の増加は緩やかであった。2020年末の代替燃料車の保有台数は約34万台である(図1参照)(訳者注:図1に示されている台数と一致しないが原文のまま記載)。また、HVO100(100%水素化分解植物油)を燃料とするメーカー承認の従来型ディーゼル車のシェアが増している。ただし、現在、このシェアの大きさに関する利用可能な統計情報はない。

図1 先進燃料乗用車台数(2011〜2020)
代替燃料自動車の台数は、総乗用車台数(HVO100のディーゼル車は除く)の8%に相当する。小型商用車と重量車については、それぞれ3%と2%である。しかし、バスについては、ガソリンあるいは軽油燃料で登録された車両以外のシェアは約27%である。ディーゼル登録のバスにはHVO100が多く使用されている。
スウェーデンではフレックス燃料エタノール車が最も一般的な代替燃料車であるが、2019年中に販売されたエタノール燃料(E85)は、販売された輸送用燃料のエネルギー量の1%未満にしかなかった。非常に広範囲で、フレックス燃料車はガソリンを燃料としている。メタン燃料自動車の台数は、保有台数の約1%に相当する約4万台で停滞している。充電式自動車の台数は過去数年間で大幅に増加している。
スウェーデンにおける再生可能バイオ燃料と電力の輸送用利用は19テラワット時(TWh)に達し、2021年中に販売された輸送用燃料の26%を占めた(図2参照)。2021年にスウェーデンで使用された再生可能燃料の約80%は、HVOと脂肪酸メチルエステル(FAME)であった。

図2 2021年における自動車交通部門での燃料消費量(TWh)、一次統計
HVOがスウェーデン市場に導入された当時は、スウェーデン、フィンランド、米国産の粗トール油を原料として生産されていた。HVOの需要が増加するにつれ、原料の種類と原産国が増加した。2020年には、原料の大部分(72%)が食肉処理場廃棄物であった。残りのシェアは、順に粗トール油、コーン油、パーム油、パーム脂肪酸留分である。図3に示すように、HVOの原料の大部分は輸入品である。2020年のスウェーデンにおけるHVOの使用による平均GHG排出量は、メガジュール(MJ)あたりCO2約10g に相当する。
FAMEは、主に菜種油から生産される。菜種油は、寒冷地での特性(例えば曇り点(訳者注:石油や油脂が冷却した時に一部の成分が結晶化・析出し始める温度))が北欧の気候に適しているため、他の多くの植物油に比べて好ましい原材料である。

図3 2020年にスウェーデンで消費されたHVO原料の原産国割合
実証研究
スウェーデンエネルギー庁は、いくつかのエネルギー関連研究、開発及び実証プログラムを行っている。
・エネルギー・環境
このプログラムは、エネルギー効率の向上、再生可能燃料への移行、地域・地方の環境負荷の低減、及びグローバルな視点でのスウェーデンと英国の自動車産業の競争力を強化する可能性のある分野での自動車関連の研究、革新、開発活動に焦点を当てている。
・2018年から2023年までの輸送効率の高い社会のためのシステムレベルでの研究プログラム
このプログラムは車両またはエンジンの技術開発に焦点を当てたプロジェクトは対象としていない。
・2015年から2021年の間の高エネルギー効率車両
自動車用先進燃料並びに道路車両及び建設車両等の非道路車両が対象となる。
・バイオ燃料プログラム、熱化学プロセス及びバイオ化学
・再生可能燃料及びそのシステム(2018年から2021年)
運輸用再生可能燃料に関するスウェーデンエネルギー庁及びスウェーデン知財センターの共同プロジェクト
・内燃機関研究能力のある3研究所及び触媒研究能力のある1研究所
それらの研究所は、自動車業界、大学、及びスウェーデンエネルギー庁と共同研究を推進しており、各プロジェクトは事業費の三分の一が補助される。
・スウェーデンガス化センター
このセンターは、バイオ燃料製造のための大規模ガス化に焦点を当てているほか、他分野のバイオマスガス化に関する事業も行っている。
・広範囲の技術をカバーするパイロット事業や実証事業
今後の動向
スウェーデンでは、2030年のGHG排出量を2010年比で70%削減し、2045年までにCO2のネット排出量をゼロにするという高い目標が設定されている。車両の代替を考慮すると、先進的な自動車燃料はこれらの目標を達成するために重要な役割を担っている。
その他の情報源
・スウェーデンエネルギー庁、
http://www.energimyndigheten.se/en/
・スウェーデン再生可能輸送燃料知財センター、
http://www.f3centre.se/
主な変化
2017年、スウェーデン議会は、以下の目標を掲げた新しい気候法を採択した。
・2045年までに、スウェーデンの大気中へのGHGのネット排出量をゼロにすること。
・国内輸送(航空を除く)の排出量を2030年までに2010年比で70%以上削減すること。