■海外情報

★ チリにおける自動車用先進燃料の動向
《AMF-TCP(自動車用先進燃料技術連携プログラム)2019年間報告書より》

 

出典:https://www.iea-amf.org/(英語ページ)

◆◆チリ◆◆

自動車用先進燃料普及の背景及び政策
 チリは、温室効果ガス(GHG)排出量と気候変動に関する国際協定に調印しています。そのため、国としてエネルギーの効率的使用を促進する目標を設定しています。
 2019年は、合意のための模索やより持続可能なエネルギーマトリクスに移行するためのコンセンサスを得る年でした。最初のステップは、2050年までにカーボンニュートラルとなるエネルギーマトリクス脱炭素化計画に関する個別公約でした。この野心的な目標を達成するために、チリはクリーンエネルギー利用に加え、発電マトリクスのクリーン化を計画しています。
 現在、チリで生産されているエネルギーの40%は、地域汚染物質と地球温暖化の原因となるGHGを排出する石炭に由来するものです。2050年までにカーボンニュートラルにするためには、石炭でエネルギーを作る発電所の数を減らすことが不可欠です。最初の戦略フェーズでは、2024年までに合計1,000メガワットに相当する8基の発電所の廃止が含まれています。これらの発電所の閉鎖はすでに政府と事業会社によって発表されています。2番目の戦略フェーズでは、2040年までに国内の残りの20か所の石炭火力発電所の閉鎖です。
 チリは世界で最も高い日射量を誇る国ですが、それに加え南部の風力ポテンシャルも非常に高く、また約3,000の火山を含む山地と6,000km以上の海岸線があり、地熱や海洋エネルギー開発のための巨大なポテンシャルを有しています。実際、太陽光、風力、地熱などの非従来型の再生可能エネルギー(NCRE)は、チリで消費される電力の20%以上となっています。国は2025年目標の再生可能エネルギー20%を当初予想より6年早く達成しました。
 チリの最終エネルギーの36%が運輸部門で消費されており、このうち99%が石油製品です。この分野は、国の総GHG排出量の約20%を占めています。運輸部門におけるGHG削減のためには、自動車のエネルギー効率を改善する必要があります。現在進行中のいくつかの国のプロジェクト(排出ガス基準適合促進のため官民で行われているサンティアゴでのバスシステムプロジェクト:車両のエネルギー効率測定、運輸を含む部門を横断するエネルギー効率基準の策定、及びエレクトロモビリティ(移動の電動化)の促進)は、エネルギー効率とCO2削減に直接的影響をもたらすものです。

◇サンティアゴにおける公共交通の入札
 チリの首都で最大都市であるサンティアゴでは、新しいビジネスモデルを用いた新交通計画が提案されています。この提案ではバス車両の供給はルート運行業務と分離されています。
 2019年11月、チリ政府はサンティアゴの公共交通機関のバスの入札を発表しました。この新しいモデルでは、バスは州から提供され、運行事業者は車両の運行に必要なメンテナンスとターミナル業務を担当します。主な目的は、設備投資と営業費用を分離することです。サンティアゴの公共交通であるバスのこの新しい運行システムにより、契約事項を満足しない事業者を簡単に置き換えることができます。その場合バスの撤収が行われ、新しい運行事業者に提供されます。
 この取り組みのキーポイントは、
  • ・バス車両の供給は、ルート運行業務と分離。
  • ・現在の全車両(6,500台)のうち2,000台以上が刷新。
  • ・快適性、安全性、乗降性、ネット環境、排出ガス性能について高い基準を満たした新しいバスの導入。
  • ・入札における車両の技術的側面に加えて、エネルギー効率の良いバスほど重み付けが高い評価。

サンティアゴでの新しいバス輸送の提案に関連する日程は、2019年11月入札公示、2020年2月公募、及び2020年5月落札者決定となっています。

◇車両のエネルギー効率規制 (www.consumovehicular.cl)
 チリは、2013年6月に新しい軽量車両を対象にエネルギー効率のラベリング表示を導入した最初のラテンアメリカの国となりました。2017年6月このラベリング表示は拡大され、中型車両と電気自動車を含むようになりました。これにより、軽油、ガソリン又は電気の新しい軽量車両を購入する人は、エネルギー効率を比較できるようになりました。
 燃料効率を示す車両ラベルは、ガソリン車又はディーゼル車の場合はkm / l、電気自動車の場合はkm /kWhです。すべての計測において、都市内、高速道路、混合運転が考慮されています。各車両の測定値は、大きなデータベースを形成させるのに役立っています。長年にわたったこれらの計測により、軽量車両及び中型車両のエネルギー効率に関する規制と基準策定の基礎となるさまざまな研究が可能になりました。

◇国のプロジェクト - エネルギー効率
 住宅部門、製造部門、運輸部門、建築部門など、さまざまな分野でエネルギー効率を改善することが重要です。運輸部門では、法に基づくプロジェクトにより、軽、中、重量車両の燃料消費のエネルギー効率基準を定義することが提案されています。このプロジェクトは、チリ議会で議論され2019年の終わりに上院で承認され、続いて下院での議論が続くことになります。
 附属した調査では、軽量車両のエネルギー効率の基準を定義するさまざまなシナリオを開発しました。シナリオでは常に、特定年の新車群の平均性能曲線から得られたベースラインが考慮されています。
 エネルギー効率の基準は、車種ごとに異なっています。基準は、軽量車両の場合短期間で、中量車両の場合中間的な期間で、重量車両の場合長期間にわたり計測されます。これらの基準を定義するために使用される単位は、エネルー効率はkm / l、CO2排出率はCO2(グラム) / kmで、いずれもガソリン当量での単位です。車両がエネルギー効率の基準に準拠していることを確認する責任があるのは、チリで販売される車両の各ブランドの輸入業者または代表事業者です。エネルギー効率の基準への準拠は、毎年管理されます。輸入業者または各車両ブランドの代表事業者に違反があった場合は罰則が科されます。

実証研究
◇バスのエネルギー効率、及びTransantiagoでの燃料消費量の測定
 電気バスのエネルギー消費量の計測は、サンティアゴ市の公共交通都市バスのエネルギー消費量を得るための技術規則(MTTの決議2243)に従って、2019年に行われました。結果は、運輸通信省「3CV」に属する車両制御及び認証センターのウェブサイト(https://mtt.gob.cl/3cv.html(左側の列: Certificacion Caracteristicas Funcionales y Dimensionales Buses Transporte Publico Urbano Santiago(スペイン語ページ)))を参照して下さい。

◇重量車の性能評価 (IEAの共同研究アネックス57)
 世界中のトラックの性能を評価するプロジェクトが、IEA(国際エネルギー機関)のAMF-TCP(自動車用先進燃料技術連携プログラム)により進行しています。このプロジェクト(アネックス57)の中でのチリの目的は、チリの都市や道路を循環する車両群を代表してトラックの燃料消費量情報を取得することです。以下の手順で試験が実施されました。
  • ・燃料消費量の測定単位:km / l
  • ・試験法は「World Harmonized Vehicle Cycle」(WHVC)で、車両はすべてのカテゴリにおいてシャーシダイナモメーターで測定
  • ・測定場所は、チリ運輸通信省の3CV車両制御及び認証センターの排出ガス実験施設

 このプログラムを開始するために、燃料消費の測定は、カスタマイズされたトラックを提供する3社で行われました。計測は2020年1月に開始され、1年間に少なくとも6台のトラックの試験が実施される予定です。

今後の展望
◇官民協定
 エネルギー省は、運輸環境省とともに、2018年から2022年のエネルギー計画で提案されたアクションの実行を通じて、国のエレクトロ・モビリティ戦略を主導しています。2019年には、重要な進捗がありました。現在、400を超える電気バスが、サンティアゴの公共交通バスで運行されています。また、チリではすでに広まっている充電ネットワークが拡大し、電気自動車の販売率が高まると予想されています。
 チリがエネルギーマトリクスのクリーン化という目標(2050年までにカーボンニュートラルになることを目的とした、エネルギーマトリクスの脱炭素化に関する官民合意)を満たすまで、クリーンエネルギーを自家用車、貨物自動車、公共交通機関で使用することになります。したがって、国はこれを複数のレベルで準備し続ける必要があります。現在までに、54の企業または官民組織が、エネルギーマトリクスの改善に取り組んでいます。つまり、エレクトロ・モビリティへの投資のための特定金融商品の開発、人材育成、電気自動車の供給拡大、充電所数の増加、及びその他の重要なアクションなどです。

補足情報

戻る

一般財団法人 環境優良車普及機構 〒160-0004 東京都新宿区四谷2丁目14-8 TEL:03-3359-8461(代表) FAX:03-3353-5439
Copyrightc 2010・2011 Organization for the promotion of low emission vehicles. All Rights Reserved.