自動車環境問題に関することばを取り上げて解説します。
天燃ガスは、石油や石炭と同じ化石燃料の一種で、油田地帯、ガス田地帯から産出されるメタン(CH4)が主成分の無色透明な高カロリー可燃性ガスです。常温常圧下で気体で、空気より軽いため、ガス漏れを起こしても地上に滞留せず上方に拡散します。また、軽油やガソリンと比較して燃焼範囲が広く、着火性を示すオクタン価も高いため、火花点火方式のエンジンを搭載した自動車用燃料に適していると言えます。
注)軽油、ガソリンは代表的な数値を示す。
出典オランダTNO研究所
天然ガスは、国内では新潟や千葉などで産出されていますが、その生産量はわずかであり、国内の天然ガス総需要の90%以上は、東南アジアやオーストラリアなどからの輸入に依存しています。輸入の際には、天然ガスを−162℃の極低温に冷却し、硫黄分などの不純物を除去した液化天然ガス(LNG)の状態にします。国内で都市ガスとして供給される天然ガスは、LNGを気化し、熱量および燃焼性の調整や漏れ対策の付臭を行ったもので、一般的に12Aや13Aと呼ばれています。
圧縮天然ガス(CNG)車には、エコステーション等において200気圧に加圧して供給されています。
出典:LNGハンドブック・通関統計(1997年)
天然ガスは、軽油やガソリンと比較して単位重量あたりの炭素(C)量が少なく、発熱量は多いため、同一エネルギー量で比較した場合、二酸化炭素(CO2)の排出量は約24%少なくなります。さらに、黒煙や粒子状物質はほとんど排出されません。
注)カッコ内の数値は軽油を1とした場合の相対比率を表します。
天燃ガスは、1970年代のオイルショック以後、石油代替燃料の一つとして関心が高まり、さらに最近では、排出ガス低減策の一つとして、天然ガス自動車の研究開発と普及が進められてきました。国内の天然ガス自動車は、平成14年3月末現在で、約12,000台が普及しています。
CNG車は排出ガスがクリーンであるというメリットがありますが、ディーゼル車と比較して航続距離が短いといったデメリットが指摘されています。これは天然ガスが気体のため、軽油と比べると、車載できるエネルギー量が少なくなってしまうためです。例えば、2トン車の例で見ると、CNG車はディーゼル車の6割程度のエネルギー量しか搭載できません(下表)。しかし、比較的走行距離の短い都市内貨物輸送や都市バスなどの分野では、そのクリーンさを活かして多くの車が活躍しています。
*):Nm3とは標準状態(0℃、1気圧)における気体の体積を表します。