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なるほど!ザ・ワード〜低公害車用語解説〜

自動車環境問題に関することばを取り上げて解説します。

第5回 燃料中の硫黄分

石油は、天然にできた可燃物の鉱物油及びその製品の総称です。化学的にみると、多数の似通った分子式をもつ炭化水素を主成分にした液体です。
採掘後、製油所に運ばれてきた原油は、蒸留装置や分解装置によって、ガソリン、灯油、軽油、重油などのさまざまな石油製品に生まれ変わります。各種石油は、蒸留装置の中に、加熱炉で350度に熱した原油が吹き込まれ、沸点の差によって分留されて製品になっていきます。

■常圧蒸留装置のしくみ
常圧蒸留装置のしくみ

常圧蒸留装置のしくみ(出典:石油情報センター)

さて、ディーゼル車の燃料に使われている軽油ですが、日本では軽油に含まれる硫黄分は、500ppm以下に規制されており、実際に販売されている軽油製品の硫黄含有量は300ppm程度ですが、欧州諸国の中には、EU規制値50ppm以下に対して、実際には10ppmや1ppmレベルの軽油が流通している国もあります。硫黄を多く含む軽油がエンジンなどで燃焼すると、硫黄酸化物やサルフェート(なるほどザ・ワード第1回参照)といった有害物質が発生するうえ、排出ガスから有害成分を除去する役割を果たす触媒の働きを劣化させてしまいます。現在実用化されているディーゼル微粒子捕集装置(DPF)を導入する際には、硫黄分の少ない軽油を使用することが前提となっています。このため、軽油の低硫黄化はディーゼル車の排出ガス低減に不可欠とされているのです。

■日本の軽油硫黄分の推移
日本の軽油硫黄分の推移

日本の軽油硫黄分の推移 (出典:石油情報センター)
注)1ppm=0.0001%

燃料中の硫黄分を減らすとそれ自体でPMの排出量を低減することができます。
硫黄分の違う軽油とPM排出量の関係を調査したところ、低硫黄軽油の場合、標準軽油にくらべ、NOxはトラックで5%〜6%、バスで5%〜17%、PMはトラックで11%〜17%、バスで15%〜25%の低減がみられました(低減幅は、エンジンによって異なる)。
下図は、燃料中に含まれる硫黄分とPM排出量との関係を示したものです。

■燃料中に含まれる硫黄分とPM排出量との関係
燃料中に含まれる硫黄分とPM排出量との関係

軽油中の硫黄分の低減は、世界的な潮流となっています。世界的にも燃料標準化の動きがあり、日本でも、ディーゼル車の新長期排出ガス規制が前倒しで施行されるのに伴い、燃料となる軽油の硫黄分は2005年から50ppmに制限される見通しです。
下図で海外及び日本の硫黄分規格を紹介します。このように、軽油中の硫黄分の規制を強化する動きは世界的なものであります。日本でも、石油メーカーは各社独自に低硫黄化に取り組んでおり、すでに一部前倒しで低硫黄軽油の供給を開始している会社もあります。

■海外及び日本の硫黄分規格
海外及び日本の硫黄分規格

WWFC = 世界の自動車メーカーの推奨 
*) 500 mg/kg = 500 ppm = 0.05 wt-%
出典:Cleaner Fuels for Europe 2000年11月23日
Seppo Mikkonen Fortum Oil and Gas Oy


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