なるほど!ザ・ワード〜低公害車用語解説〜

自動車環境問題に関することばを取り上げて解説します。

第14回 水素

◆水素の特徴

水素原子(元素記号H)は宇宙で最も軽く、豊富に存在する原子であり、水や有機化合物、生物内部にも多数存在します。水素(H2)は、常温で無色・無臭の気体として存在します。標準状態(0℃、1atm)での比重は、空気を1とすると0.07と非常に軽い気体です。−253℃まで冷却すると液化します。
水素は工業的にあらゆるところで使用されています。例えば、アンモニアの製造や、石鹸、化粧品、マーガリンなどの油脂の製造、メタノールやDMEの製造過程などで水素が使用されます。
水素は可燃範囲が広く、単位質量あたりの発熱量がガソリンや軽油の約3倍と非常に大きいため、燃料としての利用も進められていますが、液化するための低温技術が必要なことや、燃焼が速すぎて制御が難しいことなどから、これまで自動車用内燃機関にはほとんど用いられませんでした。
最近では、水素を内燃機関で直接燃焼させるのではなく、水素をイオン化して電気的エネルギーを取り出す燃料電池用燃料としての利用が注目されています。


◆生産・供給方法

現在、水素の工業的製造方法には大別して、メタンの水蒸気改質(リフォーミング)法、部分酸化法および電解法の三種類があります。
日本で消費される水素は年間約235億m3であり、ガソリンの年間消費エネルギー量の約12%にあたります。ほとんどが工業用であり、外販されている水素の量は全水素消費量の1%程度しかありません。
現在の製造方法における課題は、コストおよび製造時の二酸化炭素(CO2)排出です。


◆環境への影響

水素を内燃機関用燃料として使用した場合、燃料中に炭素分を含まないため、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)やすすが全く排出されません。三元触媒等により窒素酸化物(NOx)も浄化できるため、排出ガスは非常にクリーンになります。また、燃料電池に適用した場合は、水しか排出されません。自動車から地球温暖化ガスであるCO2は排出されませんが、化石燃料からの水素製造時にガソリンや軽油よりも多く排出されるため、ライフサイクルによる評価が必要です。

◆水素を燃料とする自動車の開発と普及状況

水素を燃料とする自動車には、従来の内燃機関により動力を得るものと、燃料電池を搭載するものがあります。
水素内燃機関自動車は、ドイツのBMW社が乗用車の商品化を目指した開発を進めており、現在、試作車による試験走行を行っています。日本では、2003年開催の東京モーターショーにおいて、マツダが水素ロータリーエンジン乗用車を発表したほか、武蔵工業大学は1986〜1994年に液体水素エンジン搭載トラックの開発を行いました。
一方、燃料電池自動車は欧米を中心に路線バスや乗用車の開発プロジェクトが進められてきました。日本では2002年に圧縮水素燃料電池自動車の技術指針が策定され、東京都が路線バスの営業運行を開始するなど、実用化に向けて実証試験が行われています。

写真
燃料電池バス

出典:東京都HP


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