なるほど!ザ・ワード〜低公害車用語解説〜

自動車環境問題に関することばを取り上げて解説します。

第6回 炭化水素

炭化水素は炭素と水素からなる化合物の総称で、ハイドロカーボンとも言われます。石油からつくられる燃料(ガソリンや軽油)は、多様な炭化水素の混合物です。これが自動車のエンジンの中で完全に燃えずに(いわゆる燃料の燃え残り)、排気管から排出ガスの一部として大気中に排出された場合、大気汚染の原因となります。気体(ガス状)で排出された場合にのみ「炭化水素」と呼ばれ、排出ガス規制が設けられていますが、すすなどの固体に付着した場合や液体で排出された場合は「粒子状物質*」と呼んで区別して規制されています。
[*なるほど・ザ・ワード第1回粒子状物質(PM)参照]

炭化水素が人体へ及ぼす影響をみてみましょう。炭化水素は高濃度になると直接、中毒などの健康被害を発生することがあります。しかし、事業所などの密室で扱われる場合などを除いて、大気中の炭化水素濃度が高濃度になることはなく、むしろ二次的に生成される、いわゆる光化学スモッグによる被害が重大です。
光化学スモッグは、工場や自動車などから大気中に排出された窒素酸化物(NOx)及び炭化水素が太陽の強い紫外線を受けて光化学反応をおこし、発生するもので、主な成分はオゾン(Ox)などの酸化性物質です。 これらの酸化性物質は、刺激性が強く眼のチカチカやのどの痛みを引き起こします。人体への影響は、一過性でほとんど医師の治療を必要としませんが、場合により酸素吸入や入院加療が必要となるケースもあります。
このため、自動車から排出される炭化水素の排出量を規制の対象としているわけです。

自動車から排出される炭化水素については、昭和48年から大気汚染防止法に基づく排出ガス規制が実施されており、その後、逐次、規制の強化が進んでいます。近年では、平成12年から平成14年にかけて、ガソリン自動車についての規制が強化され、平成14年から平成16年にかけてはディーゼル自動車についての規制が強化される予定です。

エンジン内では、燃焼中の酸素が不足したり、酸素は十分にあってもエンジン冷間時等の燃焼温度が低く、燃焼が不活発な状態では、炭化水素が発生しやすくなります。
ディーゼルエンジンの場合、燃焼室内には常に十分な酸素が存在し、燃焼温度も比較的高いので、炭化水素の排出量はもともと少なく、燃料である軽油の揮発性(燃料の段階で気化する現象)も低いため、ディーゼル自動車で炭化水素が問題になることはほとんどありませんでした。
ガソリンエンジン自動車の場合、未燃焼のまま燃料のガソリンが排出されることがありますが、炭化水素のほとんどは、三元触媒装置や酸化触媒装置によって取り除くことができるようになりました。しかし、ガソリンエンジンでは、触媒が暖まり排出ガス浄化機能が働くようになるまでの間は、炭化水素が排出されます。このため、触媒が早く暖まるようにする等の技術開発が行なわれています。
天然ガス自動車で使われる天然ガスはメタンCH4が主成分です。燃料の天然ガスもガソリンエンジンの場合と同じように、未燃焼のまま排出されると、炭化水素排出ガスとなります。

◆NMHC(非メタン炭化水素)

ところが、メタンは、比較的安定した物質であり、光化学反応性が低いので、光化学スモックの原因とはなりにくく、他の炭化水素と区別して考えてもよいということになっています。
天然ガス自動車の排出ガスについては、すべての炭化水素からメタンを除いた非メタン炭化水素(NMHC)の排出量について排出ガス技術基準が定められています。

NMHC=THC-CH4
(非メタン炭化水素)=(全炭化水素)−(メタン)

圧縮天然ガス自動車の排出ガス技術指針より

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